戦国期を扱うドラマでは、ドラマの主人公となる戦国武将の

夫婦間や親子の間の情愛がしばしば作品のテーマとなります。

しかし、戦国期の庶民の家族がドラマなどで取り上げられる

事はありません。

何故か? 

庶民の有り様を記す記録が乏しいから。

あるいは、極論すれば、家族が存在しなかったから!?

 

江戸徳川期では、武士も庶民(農民、町人)も家を単位として

集団が組織されていました。大名の家臣は家を単位として

各藩藩主と主従関係を結び、農民は家を単位として人別帳に

登録されていました。

 

しかし戦国期以前ではどうやら多数の庶民は未だ家を形成して

いなかったようです。庶民の多くは有力農民、荘園領主に隷属。

当然彼らは、「固有の家名・家産・家業を持つ父系直系のラインで

継承されるべき家」を持たなかった。

 

市場(貨幣)経済の進展により、この隷属農民の労働力に依存する

生産スタイルは徐々に減じて、戦国期の後半以降小農民の自立が

より活発化します。

貨幣が普及し都市的集落が誕生すれば、農民の生産目的において、

従来の貢納と自給だけではなく、利潤の獲得が大きな意味を持ちます。

働くことのモチベーションが大きく高まる訳ですね。

 

隷属する農民から自立する農民への移行によって、家の形成が

農民の間でも進み、それに伴い村共同体が各地で多く誕生します。

 

そして兵農分離と太閤検地の一地一作人制により農民の自立は

一層加速され、家が社会秩序の編成単位となります。

 

庶民の家族の誕生です。

 

そして江戸徳川期に家族の時代が始まります。

庶民の家、家族が夫婦を軸として営まれ、子供の教育に熱意を

傾け、家の恒久の存続を願う時代です。