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6度の結婚をくりかえした伝二郎さん [幕末 江戸]

*戦国グッズ・幕末グッズの侍気分は年初(11日、2日)鎌倉で

臨時出店します。どうぞ宜しくお願いします。

 

農民.jpg

 

信濃国湯舟沢村(現岐阜県中津川市)に一組の夫婦がいました。

夫の八郎は戸主の伝七の弟で初婚。

妻なべは他村の生まれだが、父の死去で母とともに湯舟沢村に

戻ってきた。

なべもまた初婚でありました。

二人が結婚したのは1745年。

41年の歳月をともに過ごした後、1785年夫の伝七の死によって

二人の結婚生活は終わりました。

 

なべは21歳の時に伝七のもとに嫁ぎ、42歳に至るまでに7人の子を

生みました。

そのうち3人の女の子は早逝しましたが、残る4人の子供たちは無事に

成人を迎え、2人の女子は隣村に嫁ぎ、2人の男子は湯舟沢村で伴侶を

得ました。

 

同じく湯舟沢村に生まれた伝二郎は八郎・なべ夫婦とは対照的な人生

送ります。

 

伝二郎は1739年、21歳で初めて妻を迎えます。

相手は同じ村のしわという名の15歳の少女。

翌年しわと離縁。

しわは実家に戻り、翌年村内のまた別の家へ17歳で嫁ぎます。

伝二郎は離婚2年後の1742年に隣村から19歳の妻を迎え入れますが、

この結婚も短期間で終わります。

与兵衛で名前を変えた伝二郎は、1751年に3回目の結婚をします。

村内のたけ、年齢18歳。

二人の間には与藤次と名付けた男の子が生まれますが、1757年に

二人は離婚。

たけは与藤次を伝二郎の家に残して実家に帰ったのちに、25歳で

隣村に嫁ぎます。

(省略します)

伝二郎の6度目、最後の結婚は1767年伝二郎49歳の時でした。

結婚の翌年にはあきという名の女の子が生まれます。

この最後の結婚はなんと15年続き、1782年伝二郎の死去で終了します。

 

この1組の夫婦と一人の男は、鬼頭宏氏の「人口から読む日本の歴史」

という著書に登場します。

鬼頭氏は歴史人口学という学問分野の高名な先生だそうです。

歴史人口学とは同著によれば、「過去の人々が何歳で結婚し、

何人の子を生み育て、どこからどこへ移動したというような、

人々がその一生のうちに経験するあらゆる人口学的行動が研究対象

となる」学問です。

 

江戸時代の人口史気研究にとって宗門人別改帳は貴重な情報をもたら

情報源で、八郎・なべの夫婦、伝二郎のこともこの宗門人別改帳に

記されています。

宗門人別改帳は戸口調査としての人別帳と信仰の取り締まりを目的

とした宗門帳の重合によって生み出されたものです。

 

同著ではこの宗門人別改帳をデータベースとして江戸期庶民の人生を

解き明かしていきます。

 

非常に興味深い本です。

 

名もない庶民の姿が浮かび上がってくるようです。

 

伝二郎さんは、ちょっと極端かもしれませんが、江戸期の離婚率は

現代より高いというのが定説のようです。

 

離婚率の高さは庶民だけではなく武士も同様です。

磯田通史氏著「江戸の備忘録」によれば、正確な記録の残る愛媛

宇和島藩士32人について調べると、なんと4割が離婚経験者。

 

意外にも結婚は一生ものという観念が定着するのは

明治後期以降だそうです。

統計のある国の中では、明治半ばまでの日本は、世界最高レベルの

離婚大国だったそうですよ。

 

八郎さん・なべさんご夫婦は3人の子を幼く亡くしています。

 

江戸時代の平均寿命は短くおおよそ38歳程度です。

もちろんこれは、乳幼児の死亡率の高さが影響しています。

高い乳幼児の死亡率をカバーし人口が維持されるには、高い出生率

が必要となります。

江戸時代、4人から5人の子を産まないと人口を維持できなかった

との研究もあります。

20歳ごろに結婚し、50歳まで結婚を継続した夫婦は普通少なくとも

5人から6人の子供を作ったそうです。

 

また当時は男より女の平均余命が短かった。

出産は女性にとって大きなリスクとなっていました。

 

 

湯舟沢村の八郎さん・なべさんご夫婦、伝二郎さんとも、

ほんの数ページのお付き合いでしたが、とても印象に残りました。

 

 

 

 

 


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海を渡る

こんばんは。
コメントありがとうございます。
私も自転車や徒歩で何度も橋を渡りましたが、
何度通っても飽きません。
また来て下さい^^。
by 海を渡る (2013-12-16 19:23) 

アナログ侍

海を渡る さん
今晩は。コメント有難うございます。
何度も渡られたとは羨ましい限りです。
今治城もいいですね。
by アナログ侍 (2013-12-17 00:13) 

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